『進化と人間行動』

一応最後まで目を通しました。

教科書としてよく纏まっていると思います。

 

本の最初の頃、第一章にウィルソンの「社会生物学」のことが書かれています。大論争を引き起こした本らしい。1975年の事です。

動物だけではなく、人間も、他の動物行動と同じように解明しようとしたことで、大論争が起こったという。

この時、J・グールドは、大掛かりな反ウィルソンキャンペーンを張ったらしいのですが、その主張は;人間の行動に生物学的・遺伝的基盤があるという説明は、人間の現状がなぜこうなっているのかを説明することによって、現状を肯定するものだ。人間社会の現状は、差別、不平等、搾取などの不幸と悲惨に満ちている。人間の行動を遺伝で説明するのは、それに生物学的根拠があるとすることであり、保守反動的な行為である、と。

 

現状を説明することが、現状を肯定することになる、のだろうか

 

説明と価値判断は別ではないか

 

と書かれています。この本の著者はそう考えているようです。

 

最後まで読んで、ここ最初の所に戻ってみて、一般の人は、科学者ではないし、科学的訓練を受けているわけではないので、説明と価値判断を区別しないのではないかと、私などは感じます。つまり、グールドの心配はもっともである、と。

科学者は実験したいがために、動物の心を否定した(と私は思っています)。自分たちの都合でどういうことをするか、本当のところ、信用ならない。これは、科学者だけのことではなく、人間にはそういうところがある、と。

だから、グールドなき今、グールドのような人が求められているのではないか、と。

 

内容については、私は、とても勉強になりました。

『あなたのなかのサル』と合わせて読むとなかなか考えさせられます。