『晩夏』

【人間は一つしかないものだけを礼賛して求めようとするものです。飽くことなく満足しようとして、偏ったことに没頭して不仕合せになります。もし私たちが心の中で秩序を保つことができれば、この世にある事物にずっと多くの喜びを持てるでしょう。しかし、心の中に願望や欲望があまり多くありすぎると、それに耳を傾けて、私たちの外にある事物の純粋さを捉えられなくなります。遺憾ながら、私たちは激情の対象となる事物を重要とし、激情と関係のない事物を重要でないとしていますが、実は反対であることが多いのですよ」】 p236

 

老人から主人公である若者に向かってこういうことが言われるということは、一昔前の人々の考えていた教養人がすたれて、一芸に秀でた、偏った人間が社会の前面に出てきた時代なのかもしれません。

この本が書かれたのは、およそ200年前。日本では、天保時代です。

これからこの本がどういう風に展開してゆくのか分かりませんが、時代の見方はトクヴィルなどと似ているのかもしれません・・・あるいはむしろゲーテに近いのか。

 

・・・・・・

 

知らぬ間に梅雨明けしたようです。天気図から前線の記号が消えています。