『白痴』 坂口安吾 青空文庫337

空襲で逃げ惑う自分を描いたものである。ここまで克明に自己観察が出来るものなのだ、という驚きがある。

 

しばらく前(2年ぐらい前)に『明治大正見聞史』(中公文庫 生方敏郎)を読んだことがあるのだが、その中の、「関東大震災」を思い出した。こちらは、ジャーナリストが書いたものなので、周りの状況を主に書いている。

 

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草が伸びて、穂を出してしまうので、暑い中で、鎌を使った。植木に近づくたびにセミが飛び立つ。飛び立たないで、バタバタ騒いでいるのが居たのでそちらを見たら、カマキリにしっかり押さえつけられて、胴の五分の一ほども食われてしまっているアブラゼミであった。もう逃がしてあげるには遅すぎた。

不図。『荘子』の一節を思い出した。

確か、珍しい鳥を見かけたので禁止されている公園に入り込んだ。その鳥は、何かに気を取られていて、こちらに気が付かない。その視線の先には、カマキリが居た。そのカマキリの視線の先には、セミが居た。そのことに気づいた時に、愕然として、急いで公園の外に走り出したのだが、既に遅く、監視に見つかってしまい罪に問われた。というようなものであった。

 

暑い。暑い。特に夜が暑いですね。