『戦争における「人殺し」の心理学』 3

【どんな社会にも盲点がある。直視することが非常にむずかしい側面、と言い換えてもよい。今日の盲点は殺人であり、一世紀前には性だった。】p22

 

【本書の目的を具体的に言えば、西欧型の戦争における殺人という行為を科学的に研究すること。そしてまた、人間が戦闘で殺し合うと発生する心理的・社会的な現象および代償について、やはり科学的に研究することである。】p29

 

【・・・これまでタブーとされていた、戦闘における殺人というテーマを五年計画で研究してきた。その目的は、殺人というタブー扱いのテーマを掘り下げて、以下の点について明らかにしてゆくことである。

☆人間に生来備わっている同種殺しに対する強力な抵抗感と、その抵抗感を克服するために数世紀にわたって軍が開発してきた心理的機構について。

☆戦争において残虐行為が果たす役割と、残虐行為によって軍が力を得ると同時に罠にはまる、そのメカニズムについて。

☆人を殺すときに味わう感情について。戦闘での殺人に対する一般的な反応の段階と、殺人にともなう心理的代償について。

☆殺人への抵抗感を克服するために開発され、現代の戦闘訓練に応用されて、恐るべき成功をおさめた条件づけの技術について。

ベトナムで戦った米兵は、まず心理操作を受けて、歴史上ほかに例を見ない大量殺人を可能にされた。そして次に、戦士社会に例外なく存在する必要不可欠な浄めの儀式を心理的に拒絶された。さらに最後には、西欧の歴史にかつて先例がないほど激しく、自分自身の社会から非難・糾弾された。なぜこんなことになったのだろうか。わが国の兵士たちが、ベトナムで自分自身の祖国から受けた仕打ち・・・そのために、アメリカの300万ものベトナム帰還兵とその家族、そして今日の社会は悲劇的な代償を支払わされている。その代償についても研究する。

☆私たちの社会の亀裂が、マスコミや対話型テレビゲームの暴力と結びついて、わが国の子供たちに無差別に殺人の条件づけを行っている。そのメカニズムについて解明することが、最後の、そしておそらく最も重要な本書の目的だと思う。ある意味で、それは軍が兵士たちを条件づけするメカニズムに非常によく似ているが、違うのは安全装置がまったくないことだ。子どもたちをこんな目に遇わせているせいで、わが国は恐ろしくかつ悲劇的な代償を支払っている。その点についても見てゆくことにしよう。】p30,31

 

【私の目的は、戦闘における殺人の心理的な側面を理解し、国の呼びかけに応え、人を殺した・・・あるいは代償を支払っても殺さないことを選んだ・・・男たちの、心理的な傷と傷痕を探ることである。】p37

 

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私のブログには珍しいほどの人が訪れたようなので、

”はじめに” の所からすこし抜粋しました。

もっと知りたい人は、本のレビューなり、作者の経歴などを調べてください。