ヒトの出入りが激しい。
というのも、近々、ここを引き払い他所に移ろうとしているからである。
移転の理由は、一人住まいが難しくなったということ。
わたしの、労作性狭心症というのは、寝ている最中に起こるようなものではなさそうである。最初はそれを心配した。というのも、ここは「薬師堂」である。薬師堂で孤独死というのは様にならないから。でも、そういうことにはならないようだということがだんだん分かって安心し始めたころ、
激しい運動をしたり過労に陥ったりすると、心拍が乱れる。
或いは、塩分を摂りすぎたりしても、乱れる。らしいことも分かってきた。
それで、ヒトに合わせて行動しなければならないようなところからは距離を置き(自分の体調にあわせて休息したりできるように)、食事に注意して生活してきたのだが、食事の準備はなかなか面倒である。
病気になって半年以上も経過すると、この先ずっとこういう食事を作り続けるのは、ボクには難しすぎる、と思うようになってきている。(多分大抵の男はそうではないだろうか)
買い食いで塩分や油を取りすぎたのが病の原因のようなのだから、そこに戻ってしまうのは極めてマズい。しかし、そこに半分ぐらい戻りつつある・・・・。
それで、姉妹の所の居候になることにしたのである。先方は迷惑だろうが・・・なんとか大人しくして小さくなっていようと思っている。知人はまったく居ないところだが、
背に腹は代えられない。
それで、ここで特別交友関係が広かったわけではない(むしろ一般から見れば狭いと思う)が、急に人の出入りが激しくなっているのである。
たぶん、もうここには戻らない、来ることもないだろうから。
振り返ると、そういうことである。やがて、この世もそういう場所になるのだろう。
(いままでは、そこを去ってもこういうことは思わなかった。たぶん何時かまた来ることがあるかもしれない、来ることが出来ると思っていたのである。しかし、今度ばかりは、去ったらもう二度と戻らない、戻れない、という思いがすごく強い。誰も、ある時からそういう思いが起こるのだろう。)