『山の人生』柳田国男著

論じるような本ばかり読んでいたので、そうでない本が読みたくなった。

 

柳田さんの本は、ずっと図書館から借りて読んできたので、手元にはこの一冊しかない。

柳田さんの著作は、今では、青空文庫にも沢山収録されているが・・・紙の本に愛着があり、そちらはめったに訪れない。

 

ボクの生まれたのは茨城県の一番北の山の中だ。ちょっと歩けば福島県に入ってしまう。

子どもの時、まだ小学校に上がる前、庭で遊んでいたら、知らない男のひとが、下の方から上がってきて、家の外ですこし休憩して山の方へ登っていくのを見送ったことがある。

それが、今でも、薄れてきてはいるが、記憶に残っているのは、おばあちゃんの様子が普通ではなかったからである。おばちゃんが近くにいたということは、おばありゃんが私の守りをしていたということだろうと思う。

そのおばあちゃんがちょっとでも知っている人なら、にこやかに挨拶をかわすはずなのだ。

それで、不審に思い、誰なのか聞いたのだろう。おばあちゃんは何とか言っていたが、その呼び名はもう忘れてしまった。が、山の中で生活している人だから、付いて行ってはいけないよ。戻れなくなってしまうから、というようなことを言われた。

一人だったらついていったかもしれない、と思ったのだろう。実際ボクはそうしたかもしれない。勿論とちゅう知らないところまで行ったら心細くなり帰りたくなっただろうけれども。

 

数年後には私は都会に出てしまったので、その後の事は知らないが、そのころはまだ山の中で生活している人が居たのである。ボクの知っている田舎が急激に変わりだすのはその十数年後であろうか

『山の人生』を手に取ると、そんな昔のことを思い出す。

 

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今日は暑くなりそうである。