十年に三本 歯が抜けた。
わが衰えを嘆くこと 久しい。
天のしめす道理に従って、つとめはげんできたが
今はおそれつつしんで、死の時を待っている。
顔回のような窮乏生活に耐え、
董仲舒のように閉じこもって学問にはげんできた。
前途はなお遠いのに、
余生はすみやかに過ぎて行き
日脚の移るのが速いと
いつも心をいためている。
陸游八十一歳のときの詩である。
自分と同じ七十代に、衰えを嘆く詩を読んでないか探したのだが、
やっと八十一歳のところで見つけた。
陸游は、生涯で二万首以上の詩を詠み、七十七歳以降だけでも四千首の詩を詠んだらしい
ボクの見ている『陸游詩選』には七十七歳以降の詩は四十八首しか収められていないので、老いをテーマにしたものは本当はもっと多くあるにちがいない。
しかし、七十から八十までの十年間で歯が三本欠けたと嘆いている。
ボクなど、七十の声を聞いて数年で三本を失い、さらに数本は何時失ってもおかしくないと歯医者に言われている。八十一歳になった時に何本残っているか・・・それを思うと、たった三本しか失っていないとは、大したものだ。
・・・詩の調子は、若々しい。