『陶淵明伝』吉川幸次郎著(中公文庫)

読むのは3度か4度か

やはり、よく書かれている。詩を読むというよりは、詩をとおして

陶淵明の伝記を探っているという感じである。

同時代の権力者劉裕とその周辺の人物と、陶淵明の関係などが縦軸になって

話は進む。

 

『始めて鎮軍参軍となり、曲阿を経しとき作る』という詩は、劉裕陶淵明が同じ時に同じ将軍の元で参軍(参謀の一人)になっていた。そのときの詩だが、なかなか面白い。劉裕は手柄を立てて成り上がろうと考えていたのだろうが、その隣に、陶淵明が「国に帰りたいなあ」と考えながら、勤務をしている。

 

陶淵明の性格として

人びとがさまざまな事がらのためにたちはためく中にほうりこまれても、その孤独を主張しおおせる人物であった。また、さまざまの言葉のみだれとぶ中に、いよいよその沈黙を発揮する人物であった。という    p212

 

肖像としては、でっぷりとふとったからだ、しかし肩はあがり、瞳子は澄んでいる。

この像は、至ってその人に似ているように感じられる。 p212

 

これは岩波文庫陶淵明全集(上)』のカバーにある肖像だが・・・これのことだろうか